はじめに
近年、ウイルス性肝炎からの発癌が問題になっています。この10年の間にB型肝炎、C型肝炎の治療法は大きく進歩しています。特に今後数年のうちにウイルス性肝炎の治療は新薬の登場によって、劇的に変わると考えられます。肝臓専門医として、最新の知識に基づいた治療を心がけています。必要ならば、近隣の肝臓専門医のいる基幹病院とも連携して治療に当たらせていただきます。
B型肝炎について
- B型肝炎は血液、体液を介して感染したB型肝炎ウイルスによって起こる病気です。大人になってからの感染は殆どが一過性の感染で慢性化する頻度は少ないです。母親が感染者の場合は出産時に産道出血で子供にウイルスが感染します。この場合キャリアとなって10歳代から30歳前後までに肝炎を起こして、殆どの人でB型肝炎ウイルスの増殖は沈静化して一生経過します。しかし、一部の人では慢性肝炎に移行して肝硬変や肝臓癌へと進行する場合があります。昭和60年以降にはB型肝炎母子感染防止対策事業により,母子感染は防止出来るようになってきました。一方で、従来は日本に存在しなかった欧米型の遺伝子型AのB型肝炎ウイルス感染が出てきています。また、免疫抑制剤や抗癌剤、自己免疫疾患やリウマチなどに使用する分子標的薬といった薬剤で沈静化していたウイルスが再び暴れ出すことがあります。B型肝炎の治療にはインターフェロン治療、抗ウイルス薬による治療などがありますが、年齢や症状、病状によって使い分ける必要があります。
C型肝炎について
- C型肝炎もB型肝炎同様に血液を介して感染します。B型肝炎に比べて慢性化する率が高く、感染後15年〜20年で肝硬変、20〜30年で肝臓癌へと進展することが明らかになっています。1989年にウイルスの存在が証明された後、1990年代よりインターフェロン(IFN)治療、ペグインターフェロン(PEG-IFN)治療、これらとリバビリン併用療法が行われてきて治療成績は格段に向上してきました。2013年には新たな経口薬とPEG-IFN、リバビリンとの併用も開始され、従来は効きにくかった患者さんでも高い効果が得られるようになってきました。2014年9月以降は経口薬のみの治療薬も複数発売され、従来効きにくかった患者さんでも90%以上の有効率となっています。
さらに平成29年より新世代の抗ウイルス薬が発売され、治療期間が最短8週間となっています。
- しかし、ウイルスのタイプや基礎疾患、併用薬剤の有無によって薬剤を選択する必要があり、事前に十分な検討が必要です。また、年齢や進行した肝硬変などこれらの治療が適当ではない患者さんではウルソ、グリチルリチン製剤で肝炎の沈静化を図ることも重要です。
肝炎治療公費負担について
肝臓癌
- ウイルス性肝炎、肝硬変が肝臓癌の原因の約90%を占めていますが、最近ではウイルス陰性の肝臓癌も増えてきています。また、インターフェロン治療などによってウイルスが陰性化しても、頻度は少ないですが肝臓癌が出てくる場合がありますので、定期的な腹部超音波検査、採血によるチェックが必要です。
その他の肝疾患について
- 肝機能障害を示す病気には多様な疾患があります。まずは、薬剤(サプリメントを含む)の服用歴、飲酒歴、家族歴などの問診から検査を組み立てていく必要があります。生活習慣の改善のみでよいもの、経過観察のみでよいもの、より高度な検査が必要なもの、治療を要するものがあります。
医師
- 院長
- 片岸達夫
- 日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本肝臓学会 肝臓専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医